スギジからのメッセージ

〜ライトウェイトスポーツカー好きが集まる自動車工場の55年目のメッセージ〜


2024年創業58年目を迎えた杉山自動車工業(愛称:スギジ)。

代表取締役の2代目・杉山公男から、今までの・これからの杉山自動車工業について、そして仕事に対する情熱・ライトウェイトスポーツカーの魅力についてお話します。

episode1杉山自動車工場の誕生

当社、杉山自動車工業は昭和41(1966)年、三島に創業者である父・茂雄が創業したのがきっかけです。
父は伊豆箱根バスの整備士出身で、自らの腕一本で杉山自動車工業を立ち上げました。
父の技術を頼ってやってくるのは、バスやトラックの商業車。今の車と異なり故障が多い商業車に対して、父は黙々と修理・整備を行ってきました。まさに地域の自動車修理工場。父の時代の杉山自動車工業は、いわゆる身体である「骨組み」を作ってくれました。真面目に実直に、というのは創業当時から今も変わらず受け継がれています。

私は父の仕事姿に憧れ、高校卒業後は自動車の専門学校に通い、自動車整備をイチから学びました。私が専門学校に在学中に杉山自動車工業が設立され、私は卒業後父と同じ仕事をするべく、同社に新卒として入社しました。

折しも時代は高度成長期となり、伊豆箱根の地域には観光を中心とした産業が盛り上がってきた時代。トラックやバス、そして自家用車などの需要が高まり、私たちの会社は順調な出だしでした。

episode2 「好きを仕事に」ライトウェイトスポーツカーとの出会い

入社当初の私はまだ経験が浅く、父のように大型バスやトラックを扱う一線には配属されず、乗用車や軽自動車などの一般車両の修理を担当しました。

私の生活は、仕事も趣味も車にどっぷり。自動車と向き合い続ける日々を送りました。

その中でも、若かった私が目に惹かれ、私を夢中にさせたのは、イギリス生まれのローバーミニ。
そのフォルムの可愛さから想像できない俊敏さ、軽いボディだからこそ出せるパワーと機敏な足回りに心踊る興奮を覚えたのを、今でも鮮明に思い出します。

仕事の合間を縫っては自分でチューンナップし、休日や夜はその車の性能を仲間たちと一緒に競い合う。お互いが高まり、仲間意識が芽生えるのが何よりの楽しみでした。仲間と一緒にでかけた記憶は、私の中の宝物でもあります。

その仲間たちと一緒に、ライトウェイトスポーツカーの魅力に浸かってしまい、いつしか仲間内の自動車の整備や点検・修理を行うようになっていきます。時代はどんどんと自動車の省エネ・高性能化が進んでいく中、仲間たちが持つライトウェイトスポーツカーたちは、シンプルでありながら何度見ても飽きない魅力を持ち合わせていました。

仲間たちの自動車を修理していると、また新しい自動車の相談がやってくる。「カーブを曲がる際に少し削ってしまった」、「レースのときに事故を起こしてしまった」、理由は様々だけれど、多くの人達がライトウェイトスポーツカーが好きで、この場所に集まってくる。

ミニの修理をしているうちに、ロータスやケータハムなどのイギリス車を取り扱う機会が増えてきました。この時代の車は構造が軽量化され単純な分だけ、操縦する人間の身体能力が問われる。私はオーナーの体型や運動能力、そして何に自動車を使うのかをヒアリングします。最適なスケジューリングで順次作業を行い、整備してお戻しします。大事に乗ってくれるオーナーさん、何より同じ車が好きな仲間として、大事に楽しく乗って欲しい。大切に乗ってくれるオーナーさんが私の大切なお客様。そのお客様のために、取り扱う車は、どれも丁寧に仕上げるというのをモットーにしています。

仕事を進めるうちに、様々な要望に応えていく設備も充実していきました。常に受けた仕事をこなすだけでなく、オーナーさんの要望を叶えるワンランク上を狙ってきました。ミニができたらロータス、エンジンの整備ができたら、ボディのメンテナンスもできるようになりたい。好きだからこその向上心は今でも止まりません。

episode3日本に珍しい高度なFRP技術
ライトウェイトスポーツカーの魅力をそのままに

ライトウェイトスポーツカーはとにかくエンジンの排気量に対してボディが軽いことが特徴。1600ccのエンジンに対して車両重量は1tにも満たない。その分、快適なスピードと気持ちのいい操縦性を保てるのが特徴。フェラーリやポルシェ、GT-Rだって目じゃありません。そんなライトウェイトスポーツカーには様々な特徴があり、ボディを軽くするためにFRP(繊維強化プラスティック)を使う車が昔から多い。ボディを軽くすることはできるのですが、そうすることで故障の際の修理と丁寧な手入れが複雑になる。FRPは風雨に弱く、ボディの塗装も丁寧な手入れをしないと劣化しやすい。長年乗り続けていると変色や変形が起きてしまうし、サーキットで走ればボディを擦るし、大きな損傷をしてしまうこともある。

私たちは長年の経験と努力の末、FRPボディの塗装や補修だけでなく、限りなくオーナーの要望に近づけた復元をすることができるようになりました。その技術力は、日本でも数人しか持っておらず、現在も全国のオーナーさんからの問い合わせに対応しています。日本の自動車は軽量化するためにFRPボディを取り扱う車種が少なく、日本にFRPの技術を正確に取り扱える修理会社は少ない。単純にFRPの補修をする業者は多いが、故障した場所をベタベタと貼り付けるような従来の修復技術だと、修復箇所のボディの比重が重くなり、バランスが悪くなる。バランスが悪くなると繊細な走りに影響が出てきて、以前のような走りが楽しめなくなる。

スギジでは繊細なボディをその人の個性に合わせた車にできるだけ合わせた作りを心がけます。当たり前だけど、気が遠くなるほど繊細で、長い時間がかかる。これも好きで45年重ね続けてやってきたことだから。楽しい走りは仲間と一緒で、自身も最もこだわりたい部分ですから。

半世紀前の自動車を自分の憧れに復元させるために、私たちはまずオーナーさんの要望を聞くところからスタートします。ボディはツヤツヤがいいのか、マットな感じがいいのか。当時のままの再現にこだわるのか、少し自分らしさを出したいのか、お電話や来店頂き、オーナーさんの要望を聞いてから作業に取り掛かります。

必要に応じてはボディ全体の再現も杉山自動車が自社で行えるのが強みです。先日も、レースで大破してしまい、もう廃車にするしかないオーナーさんが、仲間のネットワークを頼ってここまできたんです。何度も何度もオーナーさんとの打ち合わせを重ね、ボディの再現に成功。日本でもFRPのボディづくりからできるメンテナンス工場は少なく、オーナーが長く乗り続けるための技術なら他には負けない自信が私にはあります。それもオーナーさんと同じ「好き」だから。オーナーさんの望みを叶えたいって一心で技術と設備を上げてきました。

episode4ライトウェイトスポーツカー好きな人々

ライトウェイトスポーツカーはレースなどの遊びを楽しむ専門で乗る人が多い。スーパーセブンに乗っているお客さんはレース場で楽しんでくれていて、ミニに乗っているお客さんなんかは、モンテカルロキャリアにスキー板を積んで冬山に毎週末遊びに行く人もいる。うちで取り扱う車のオーナーは、レースやスキー、そしてドライブ・自動車自身。何でも興味が深くて楽しむ人が多い。ライトウェイトスポーツカーに限らず、イギリス車を愛する人は趣味が多彩。わたしたちのお客さんにはそういう人が多いのかも知れません。私自身もジムカーナが大好きで、オーナーさんに声を掛けて何度も行うほどです。愛好家のみんなで1,000キロの1泊2日のドライブも、いい思い出のひとつです。

現在のお客さんも、イギリス生まれのロータス・エランやスーパーセブン、そして、ミニクーパーを心から愛している人が集まってくる。なので店舗にはディーラーがすでに販売終了してしまったパーツも、店舗だけでなくて仲間たちが持っている場合も多い。仲間のネットワークが、故障してしまったロータスなどのライトウェイトスポーツカーの命を吹き返す可能性もある。どのオーナーも最新の安全機能はついていないけど、長年ライトウェイトスポーツカーを大事に乗る人が多い。みんな、自分の身体の分身のように大事に乗る人が多いです。

episode5父から娘へ その想いを継承する

その私の背中を見て育ったのが、一人娘の綾野です。綾野は幼い頃から事務所にいて、工場が遊び場でした。綾野は幼い頃からブリティッシュスポーツカーに触れ、何度もレースや走行会に一緒にでかけたものです。そのせいか、彼女は自動車整備の大学に進学し、自ら杉山自動車のサービスマンへと成長していきました。彼女と私はもう20年同じ職場で自動車に携わっていますが、今となっては私の、私の父の意志を継ぐ立派なクラフトマンに成長してくれました。

綾野の時代のスギジは、これからも長い時間で積み上げた技術を持ちながら、お客さんの声に応えられる柔軟さを持った自動車工場であってほしい。綾野は私と一緒で、決して口が上手な人間ではないけど、懸命にその人の車や人の性格を聞き、その車をベストな状態へと修正していく。無駄なことを聞くんじゃなくて、必要なことを聞きつつ、その人のライフスタイルに合わせた修理やメンテナンス、チューンナップを行っていく。ときには空気圧の微妙なバランスなんかも、私たちはアドバイスしていきます。それはこの車を愛していて、その人にフィットする自動車に仕上げるため。吊るしのスーツじゃなくて、その人の生活様式に併せたスーツを提供する。シンプルだからこそ、お客さんに合わせたたった1台の自動車に仕上げたいと考えています。

epilogueこれからも、満足と笑顔のために

杉山自動車工業は50年を超えた現在、新しい世代へとバトンタッチをしていきます。もちろん、高度な技術と車の愛着心はそのままに、よりライトウェイトスポーツカー好きが全国から集まる杉山自動車工業を、私たちは目指していきます。

これからもライトウェイトスポーツカーを愛するオーナーの満足と笑顔のために。